聖書と共に
せまきもんとは
２０２２年６月２６日 『狭き門とは』 マタイによる福音書７章１３〜１４節（マタイ講解��） 山田 雅人
２０２２年６月２６日 礼拝メッセージ要旨 『狭き門とは』
マタイによる福音書７章１３〜１４節（講解��） 山田 雅人
▼「狭い門から入れ」−この言葉は難関学校の入学試験などに対して使われたりするが（我が家の近所には灘中高、私の英語の恩師の出身校）、イエスの真意はその意味ではないだろう。マタイでは山上の説教の一部に記されるので、言葉の背景が分からないが、ルカの並行箇所（１３章２２節以下）では「イエスは町や村を巡って教えながら、エルサレムへ向かって進んでおられた」とあるので、イエスはエルサレムの都を指差しながら「狭い門から入れ」と言われた可能性がある。
▼エルサレムは周囲を堅固な城壁で囲まれた要塞都市で、城壁の門を通らなければ中には入れない。現在も８つの城門が残り、そのうちの幾つかは聖書の中にも名前が残る。正面の最も荘厳な門は「黄金門」で、一番狭い門は「糞門」又は「不浄門(汚物門)」と呼ばれた。糞門の名称はネヘミア記(2:13)にも見られ、ゴミを焼却するために神殿からヒンノムの谷へ運ばれたことに因んだとされている。また、糞門はエルサレムの南側の一番標高の低い場所に位置し、当時は人やロバがやっと通れる程の小さな門であった。
▼さらに糞門は羊飼い、食肉業者、皮なめし職人など汚れた職業と定められた人達が専ら出入りする門として用いられた。反対に、自らの汚れなさや正しさを誇る者達は、黄金門や「ヘロデ門」を用い、ローマの軍隊は宿舎のすぐそばの「ダマスコ門」を用いた。貧しい者、汚れの烙印を押された者達が腰をかがめ、小さくなってくぐる糞門を指してイエスは「狭い門から入りなさい。その門は小さく狭いが命に通じるのだ」と言ったのだろう。
▼先日、スイスのジュネーブで行われた核軍縮条約会議において、参加はおろかオブザーバーにもなろうとしない日本政府を指して、一人の若者が「広島から声を上げないと意味がないのだ。実際にもっとも辛く悲しい目に遭った被害者の実態を見ずして、核無き平和などありえないのだ」と語っていたのが印象的だった。また、先週６月２３日の沖縄慰霊の日には、家族を失い自らも手に重い障害を負った９２歳の女性が「もう戦争はいやだ。なぜ偉い人は戦争をするのか」と、かつての沖縄戦を今のロシアとウクライナの戦争に重ねていたのも「狭き門から入れ、最も弱く小さくされている人々と肩を並べて」という、イエスの言葉を思い起こさせるものだった。
▼直前の７章８節で、イエスは「だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる」と言っている。「だれでも」だ。そのイエスが、誰もが入り、歩くことのできるわけではない、そんな狭き門に入りなさい、と言われたとは思えない。１４節にあるように、それは見出す者が少ない門、見つけにくい門ということだろう。狭く、小さく、みすぼらしく、見栄えのしない門だから、誰も見つけられない、見つけようともしない門だ。しかしイエスはその門こそ命に通じている、その道を歩みなさいと促すのだ。
▼実際に、みすぼらしく見向きもされない「狭い門」、「細い道」を歩まれた方、病人や障がい者、徴税人や姦淫の女など、罪人と世の非難を浴びる人々に関心を示し、目を留め、寄り添い続けた方が、「門であるわたしと一緒に狭い門から入り、道であるわたしと一緒に細い道を歩みなさい」と招いてくださっているのだ。
マタイによる福音書７章１３〜１４節（講解��） 山田 雅人
▼「狭い門から入れ」−この言葉は難関学校の入学試験などに対して使われたりするが（我が家の近所には灘中高、私の英語の恩師の出身校）、イエスの真意はその意味ではないだろう。マタイでは山上の説教の一部に記されるので、言葉の背景が分からないが、ルカの並行箇所（１３章２２節以下）では「イエスは町や村を巡って教えながら、エルサレムへ向かって進んでおられた」とあるので、イエスはエルサレムの都を指差しながら「狭い門から入れ」と言われた可能性がある。
▼エルサレムは周囲を堅固な城壁で囲まれた要塞都市で、城壁の門を通らなければ中には入れない。現在も８つの城門が残り、そのうちの幾つかは聖書の中にも名前が残る。正面の最も荘厳な門は「黄金門」で、一番狭い門は「糞門」又は「不浄門(汚物門)」と呼ばれた。糞門の名称はネヘミア記(2:13)にも見られ、ゴミを焼却するために神殿からヒンノムの谷へ運ばれたことに因んだとされている。また、糞門はエルサレムの南側の一番標高の低い場所に位置し、当時は人やロバがやっと通れる程の小さな門であった。
▼さらに糞門は羊飼い、食肉業者、皮なめし職人など汚れた職業と定められた人達が専ら出入りする門として用いられた。反対に、自らの汚れなさや正しさを誇る者達は、黄金門や「ヘロデ門」を用い、ローマの軍隊は宿舎のすぐそばの「ダマスコ門」を用いた。貧しい者、汚れの烙印を押された者達が腰をかがめ、小さくなってくぐる糞門を指してイエスは「狭い門から入りなさい。その門は小さく狭いが命に通じるのだ」と言ったのだろう。
▼先日、スイスのジュネーブで行われた核軍縮条約会議において、参加はおろかオブザーバーにもなろうとしない日本政府を指して、一人の若者が「広島から声を上げないと意味がないのだ。実際にもっとも辛く悲しい目に遭った被害者の実態を見ずして、核無き平和などありえないのだ」と語っていたのが印象的だった。また、先週６月２３日の沖縄慰霊の日には、家族を失い自らも手に重い障害を負った９２歳の女性が「もう戦争はいやだ。なぜ偉い人は戦争をするのか」と、かつての沖縄戦を今のロシアとウクライナの戦争に重ねていたのも「狭き門から入れ、最も弱く小さくされている人々と肩を並べて」という、イエスの言葉を思い起こさせるものだった。
▼直前の７章８節で、イエスは「だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる」と言っている。「だれでも」だ。そのイエスが、誰もが入り、歩くことのできるわけではない、そんな狭き門に入りなさい、と言われたとは思えない。１４節にあるように、それは見出す者が少ない門、見つけにくい門ということだろう。狭く、小さく、みすぼらしく、見栄えのしない門だから、誰も見つけられない、見つけようともしない門だ。しかしイエスはその門こそ命に通じている、その道を歩みなさいと促すのだ。
▼実際に、みすぼらしく見向きもされない「狭い門」、「細い道」を歩まれた方、病人や障がい者、徴税人や姦淫の女など、罪人と世の非難を浴びる人々に関心を示し、目を留め、寄り添い続けた方が、「門であるわたしと一緒に狭い門から入り、道であるわたしと一緒に細い道を歩みなさい」と招いてくださっているのだ。
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投稿日：2022年9月30日() 閲覧回数：311